動機づけ理論について、各種文献から、私なりの解釈でまとめてみました。各理論の詳細については原著等で確認してください。
参考にした主な文献
1. 組織の心理学(有斐閣ブックス)
2. 産業・組織心理学エッセンシャルズ(ナカニシヤ出版)
3. 産業・組織心理学入門(福村出版)
4. キャリア発達の心理学(川島書店)
5. 人的資源の組織戦略(中央経済社)
6. 50の経営理論が3時間でマスターできる本(明日香出版社)
7. 組織現象の理論と測定(千倉書房)*この本は大学のゼミで使用していました。かなり古い本です。
8. カウンセリング辞典(誠信書房)


産業現場における「動機づけ」とは、仕事に対するやる気、労働意欲等をいう。


内容理論(動機の内容や源泉に関する理論)
過程理論(動機づけのプロセスやエネルギーの向きに関する理論)

(1)階層説
マズローの欲求階層理論(欲求5階層説)
  人間全体についての理論

アルダーファーのERG理論
  マズロー理論を修正し、産業現場への適用

マグレガーのX理論、Y理論
  人間行動モデル(マズローの理論に基づいた)

ハーズバーグの2要因論(動機づけー衛生理論)
  職務充実につながる
  モラール・サーベイの原点となる面接調査を実施
(2)リスト(個人的動機)説
マレーの欲求理論
達成欲求、親和欲求、権力欲求、自律性欲求、養護欲求、攻撃欲求、従属欲求など多数の欲求次元により説明

マクレランドの達成動機理論
達成欲求、親和欲求、権力欲求
(3)その他
エリック・バーンの交流分析理論(ストローク理論)


ブルームの期待理論
ポーターとローラーの理論モデル
アトキンソンの達成動機理論
アダムスの公平理論
フェステンジャーの認知的不調和理論
ロックの高業績サイクル(目標設定理論)


(1)テイラーの科学的管理法→人間関係論→行動科学
(2)強化理論→欲求理論→認知理論→統合モデル
1.強化理論では学習理論を産業現場に応用した。
2.特徴
人の行動は外部から統制可能であり、管理者や経営者によって、従業員の意欲がコントロールされるとした。
学習理論とは
1) ハルの動因低減説
  刺激から反応が成立するには、習慣がいかに形成されるかにあると考えた。
要求の低減を条件づけることを強化という。
2) スキナーのオペラント条件付け
  D(弁別刺激)→R(反応)→S(R)(強化刺激)
道具的条件づけとも言われ、レスポンデント条件づけ(古典的)と、条件づけを区別した。


(1)マズローの欲求5段階説
・人間の欲求は低次元の「生理的欲求」から高次元の「自己実現の欲求」まで、5段階の階層を形成する。

・その欲求は常に低次元から高次元なものへと発展する。

・1から4までは欠乏欲求であり、「自己実現の欲求」は成長動機である。
欲求の次元 欲求の種類 欲求の内容
高次元










低次元
5.自己実現の欲求 ・使命の達成
・可能性の実現
・創造力の発揮
4.承認の欲求 ・認められたい
・尊敬されたい
・自信を持ちたい
3.社会的欲求 ・愛情、友情が欲しい
・集団に属したい
2.安全の欲求 ・危険を避ける
・安定、安全、依存
1.生理的欲求 ・休息、食欲、性欲
マズローの人間性の心理学(カウンセリング辞典から抜粋)
  病理的側面に焦点を当てる従来の心理学から、健康で成熟しつつある人間に関心が移った。
自己実現する人間、至高経験(深い恍惚感を伴う人生における最高の歓喜の経験を表す概念)など、心理学の領域を価値的な問題に拡充した。
  【私の感想】
  マズローの人間性の心理学は人間形成理論であり、産業界という特定の分野における人間に適用するには、少々無理があるが、非常に明快でわかりやすい理論です。自己理解には欠かせない理論です。
(2)アルダーファーのERG理論

・マズロー理論を修正し、産業現場への適用
・実証研究で支持されている
・フラストレーション(欲求不満足)の概念を取り入れた
・欲求の階層を進むというより、同時にあらゆるレベルに留まる

(3)マグレガーの]理論、Y理論
X理論 低次欲求に動機づけられ人間の行動モデル
否定的存在人間観、生理学的欲求や安全欲求
性悪説的人間観
Y理論 低次欲求に動機づけられ人間の行動モデル
肯定的存在人間観
性善説的人間観
Y理論による管理
1) 意思決定への参加、責任とやりがいのある仕事、良好な人間関係などが仕事への意欲を高める。
2) 目標による管理により、組織の目標と従業員の満足を両立させる。
(4)ハーツバーグの動機づけ-衛生理論(満足の決定要因と満足の関係)

・満足と不満足およびその決定要因は相互に独立の次元であり、1本の軸の両極ではない。

・人間の働く際の欲求には「仕事そのもの」と「環境」の2種類がある。

・2種類の仕事に対する要因がある
  積極的に動機づけとなる要因(動機づけ要因・意欲促進要因)
  不満となる要因(衛生要因・意欲維持要因)

動機づけ要因
・仕事の達成感
・達成の承認
・成長の可能性
・責任を負う
 
衛生要因
・賃金、処遇、福利厚生
・作業条件
・人間関係
・管理監督のあり方

・仕事に対する意欲を高めるには、達成、承認、仕事自体、責任、成長などの「内発的な報酬」を重視する必要がある。

・ 臨界事象法の分析方法を使用した(欠陥の指摘がある)
(5)マクレランドの達成動機理論
・マレーの多次元の欲求のうち達成欲求、親和欲求、権力欲求に焦点を絞った

・達成欲求: 仕事の達成や成功を収めようとする

・親和欲求: 職場での良好な人間関係を求める
         友好的で親密な対人関係を求める

・権力欲求: 職場で指導者や管理者になる
         他者に影響力を行使し、コントロールしたいとする

・達成欲求に注目し、個人差を測定するため「TAT(絵画統覚検査)」を実施した。
高い達成欲求者の特徴
1) 適度なリスクを持ち、能力や努力により評価される課題を好む。
2) 運や偶然のチャンスで結果が決まる賭けや投機的な課題は好まない。
3)

仕事の進捗状況を知ること(フィードバック)を好み、実現するとより業績を上げる。

4) 共同作業では、友人より、エキスパートを選択する。
5) 行動に駆り立てるのは、利潤動機ではなく達成動機
6) 優秀なマネージャーになるとは限らない(特に大企業)
「TAT(絵画統覚検査)」(カウンセリング辞典より抜粋)
  マレーとモーガンによって発表された投影法の人格テスト。
被験者に特定の図版を示し、これによって引き出された空想物語を、欲求、内的状態、圧力、解決行動の様式、行動の結末などの観点から分析する。
(6)エリック・バーンの交流分析理論(ストローク理論)
・ストロークとは
他の人の存在を認めるための行動や働きかけ「人はストロークなしでは生きていけない」

・ストロークの種類
1.身体的対精神的ストローク
2.肯定的対否定的ストローク
3.条件つき対無条件ストローク

・より良い対人関係を築くには
1. 自分のストロークの傾向を認識する
2.肯定的なストロークを与える
3.相手の存在を無視したり軽視しない
4.肯定的ストロークは条件つきより無条件で与える
5.否定的ストロークは条件付で与える(教育的)

・精神的ストロークの例
1.肯定的:ほめる、励ます、ほほえむ、うなずく、挨拶する、傾聴する、信頼する、任せる
2.否定的:叱る、怖い顔でにらむ、「こんなことできないのか」と怒鳴る
 
(7)ブルームの期待理論
F=Σ(E × V)
     F:
行動への動機づけ、意欲(force) E:期待 V:結果の誘意性、魅力

 V=Σ(T ×V´)
     I:
行動の道具性 V´:2次的結果の誘意性、魅力
の2つの考えをあわせた。

・期待Eとは、行動がある結果をもたらすであろうという主観的確率
・結果の誘意性Vとは、主観的価値、魅力や重要性
・基本的には個人の知覚や認知に選択基礎を置く
・行為と結果の関係が不明確であり、行為に対する期待と結果に対する期待を混同していると指摘される
(8)ポーターとローラーの理論モデル
・ブルームの問題点を修正した

M=Σ[(E → P)×Σ(P → O)×V]

      :動機付け(motivation)  E → P:努力から業績への期待
      P → O:業績から結果(外的、内的報酬)への期待

・期待を2種類に分離した。
  努力すれば業績向上する期待
  業績が望ましい結果を導く期待

・期待理論の認知論的な視点により、動機づけ研究が大きく進むんだ。
(9)アトキンソンの達成動機理論

・ミラーのコンフリクト・モデルの影響を受ける。

・目標達成行動は、成功動機(願望)と回避動機(失敗恐怖)の相反する動機(欲求)との情緒的コンフリクトの結果

・達成動機はこの2つが合わさったものと考えた

・接近傾向=成功動機×主観的な成功率×成功の誘因価

・回避傾向=回避動機×主観的な失敗率×失敗の誘因価

・合成達成動機=接近傾向−回避傾向

  但し、 誘因価=1−期待度  
       主観的成功率+主観的失敗率=1

失敗に対する対応行動

1) 達成動機が高い人
  失敗を変動的要因と受け止め、努力不足が原因として、失敗後も目標達成に向けて努力する。
2)

達成動機が低い人

  失敗を能力の不足と受け止め、無能感を抱き、失敗に直面すると努力しなくなる。
(10)アダムスの公平理論(衡平分配ルールのひとつ)
・他者との比較する中で、仕事上の報酬や待遇が公平かどうか判断する。

・公平感は仕事に対する意欲を左右する

・自分のインプット(努力や時間等の貢献)とアウトプット(報酬や昇進等の結果)を、交換関係の相手や集団のメンバーと比較する。

・公平さのモデル

・不公平感が生じたとき、解消する行動に動機づけされる。

1)実際に回復する方法
・自分の貢献や結果を変化させる(仕事の手を抜く等)    
・比較相手の貢献や結果を変化させる(邪魔をする)
・離職する

2)心理的に回復する方法
・評価を変えて認知的に公平さを回復する
・別の比較対象を選ぶ

・賃金決定システムについて研究により支持されている。

・報酬の絶対額ではなく、他者との比較により動機づけが影響される。
「公正理論(justice theory)」による公平さ
1) 分配的公平
  平等分配のルール
衡平分配のルール
必要性に応じた分配のルール
2) 手続き的公平
  決定コントロール(評価、分配の決定への参加)
過程コントロール(意見表明効果)
(11)ロックの高業績サイクル(目標設定理論)
・明確で困難な目標を設定することで人は動機づけられ高い業績を上げる。

・目標の明確さとは、目標の量的な正確さの程度

・目標に向かっていく行動を自己調整する内発的な自己動機づけ

・目標設定理論のサイクル

・従業員が目標を受け入れる要因
 目標の困難さ、管理者への信頼、成長を促す課題など

・目標設定による自己動機づけは自己効力感によっても変化する。
バンデュラの提唱した自己効力感(セルフ・エフィカシィ)
1. 自分があることに対して、成し遂げる有効な能力を持っているという認識・確信
2. 高める要因例:成功体験、他者の成功体験の観察等
3. 産業現場への適応例:セールスの成績、職業選択、新しい仕事への適応
目標設定理論と目標管理制度の違い
(産業・組織心理学エッセンシャルズより抜粋)
1. 動機づけが高まるとき
  ・目標設定理論  
 目標を立てることで、自尊感情や成功感などの内的報酬につながる

・目標管理理論   
 目標達成が高次の欲求の充足につながる
2. 業績を高めるには
  ・目標設定理論  
 目標の困難さや明確さ、目標による努力や方略考案の促進

・目標管理理論   
 目標設定への参加、権限委譲、自己統制の範囲の拡大
目標管理制度(MBO、management by objective)
(キャリア発達の心理学より抜粋)
1. 経営学者ドラッカーが提唱
2. 目標による管理と自己統制によるマネジメント
3. ロックの目標設定理論とマグレガーのY理論に理論的基礎を置く



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